朝3つ暮れ4つ
                                                              平成28年2月25日

 生活をしていく上で、心配で夜も眠れない日を経験したことがあるのではないでしょうか。人は病気、怪我、生活資金、進学など、様々な場面で悩み苦しむ事が生きている証しなのかもしれませんが、悩みがない方が良いに決まっています。
 悩みはなくなることがありませんから、その悩みを少しでも解決してくれるような誘いがあった時に、簡単に負けてしまう事がありますから注意が必要です。

 そんな目先の利益に惑わされてしまう事を、朝三暮四(ちょうさん ぼし)と言います。朝三暮四とは中国の春秋時代に、宋の国に狙公という猿好きの老人がいました。その老人が猿に餌をあげるうちに、みるみる猿の数が増えていき、家計が苦しくなってしまいました。そこで、猿に与える餌を減らそうと考え、猿たちに「これからはどんぐりの実を朝に3つ、暮れに4つやる」と言いましたところ、猿たちが少ないと怒り始めたため、「だったら朝に4つ、暮れに3つではどうか」と言いますと、猿たちはとても喜んで承知したそうです。このお話は、朝もらえるどんぐりが増えたことで、猿たちはもらえるどんぐりの実が増えたと思っていますが、実態は何も変わっていない事に気づいていないのです。このことから、目先の利益にばかり気が行きますと、だまされてしまう事を警告しているお話です。
 特に楽して儲かる話なんて有るわけなく、よくよく考えてみれば分かりそうなものですが、こんな時には人の話に耳を傾ける事が出来なくなっているのでしょう。

 また、朝三暮四には次のような意味もあります。猿に話をするときでさえ、上手に話をする事できちんと交渉が出来るという意味があるのです。つまり、人に伝える能力を磨いていれば、交渉ごとは上手くいきますが、その能力を磨いていませんと、たとえ正しいことを言っていても、周りから理解されない事があるものです。普段から、人に伝える力を養う必要があるのです。会議で説明する力、会議で意見を言う力、そして会議をまとめる力が必要であると言っているのでしょうね。

 仕事をする上で、売る場合も買う場合でも、会話をする事は間違いありません。そんなときに、出会った人の話が調子のいい話なのか、それとも骨のある話なのかを判断する事は、なかなか難しい事かもしれません。この判断をするのに何が必要かと言いますと、それら全て理解して自分の事のように意見を言ってくれる家族であり、または友人です。しかし、たとえ注意を促してくれても、これを聞き入れることが出来なければ何の意味もありません。言ってくれる人の意見を素直に聴けるだけの、人間力を高めておく必要があるのです。
 また、その人間力を高める事で、人との交渉ごともスムーズに進むようになるはずですから、人間力を高める訓練は必要不可欠です。こんな話が沢山書かれている中国の古典を一度読んでみてはいかがでしょうか。