科学の進歩

平成21年6月25日

 

 先日、皆様の御理解によって、インターネットを利用して申告(電子申告)をしてきたことで、岡崎税務署から感謝状をいただくことが出来ました。
 つい最近まで、手で書かれた確定申告書を税務署へ持参していたものが、パソコンで作成されるようになってしまい、2年ほど前からは税務署へ確定申告書を持参することなく電子申告で送るようになってしまいました。科学技術の進歩の速さには、驚くばかりです。

 しかし、その科学によって大変驚かされた判決がありました。いわゆる「足利事件」の受刑者が最高裁で無期懲役が確定していましたが、無罪となり釈放されました。17年という長い時間かかっての釈放となったのです。当時のDNA鑑定を基に最高裁で無期懲役が確定していたものが、格段に精度が上がったDNA鑑定では事実上、無罪と確定したのです。当時のDNA鑑定では最新のものと比べると「だいたい同一人物でしょう」ぐらいのものだったそうです。しかし、当時の裁判ではDNA鑑定は有力な証拠として採用されたのです。科学の力が人を翻弄させてしまったのです。

 

 夏目漱石の「行人」と言う小説の中に、
「人間の不安は科学の進歩から来る。進んで止まることの知らない科学は、かつて我々に止まることを許してくれたことがない。」
 とあるそうです。科学はあらゆる人の営みを、速く、簡単、正確にするが、同時に人は、それに翻弄される事となるようです。

 特に経営者はこの科学の進歩に目を向けていないと、今までは苦労して作っていたものが、機械の導入とともに安価で出来てしまう事になることがあります。それを「ひどい時代になった」と愚痴を言うのは簡単ですが、世間はそれを許してはくれません。確かに、今回の無期懲役に追い込んだのも科学ですが、救い出したのも科学なのです。

 

 水泳選手の北島康介選手は「泳ぐのは僕だ」と書いたTシャツを着て、いらだちをあらわにしていたことがありました。
 科学がそんなに進歩しても、それを利用する人がその力に翻弄されては、大変な間違いになってしまいます。止めることの出来ない科学ならば、頑張ってそれについて行くしかないのでしょう。道具は人間が使うものであり、それを間違った使い方をしないためのも、そして、間違った使い方をしている人から身を守るためにも大切なことかもしれません。