真実を訴えるには
                                                                  平成23年11月25日

 一年ほど前から岡崎中日文化センター様の依頼で簿記を教えに通っております。簿記を学ぶ事がいかに大切かを知って頂けるように話をしています。
 私が、簿記を勉強し始めたきっかけは、今から約20年前の事です。その頃は税理士という仕事がどの様なものなのかさえ具体的に知りませんでした。税理士の仕事を調べてみたところ、税理士には簿記の知識が必要である事を知り、日本商工会議所主催の簿記3級の勉強を始めたのがきっかけでした。

 企業の経済活動を帳簿へ記録する技術を「簿記」と言いますが、この簿記は大航海時代のヨーロッパで発明されたと言われております。いかに簡単に記録が出来、企業の経営成績と財政状態を確認することが出来ることを目的として、金融機関の方が考えたものだと言われております。そして、その記帳技術は、宣教師とともに日本へ伝わったのです。

 福澤諭吉は人が人として生活をしていくのに必要な知識として「読み・書き・そろばん」と言いました。この「そろばん」とは計算力のことを言うのではなく、簿記の知識の事を指しています。幕末の時代に、日本が独立国家として発展を遂げるには、日本人の一人一人が道理をわきまえ、独立した責任感のある人間になるために、誰もが簿記の知識を身につけるべきであると説いていたのです。

 では、なぜ簿記の知識が必要なのでしょうか。
 経営者が企業の経営成績を知ることは当然ですが、それ以上に外部の利害関係者に対しその成績が真実である事を証明しなければならなくなったからです。簿記のルールとして「整然とかつ明瞭に記載しなければならない」とあり、また法律では帳簿への記帳は、適時に証拠に基づき、さらに日付順に記帳がされていなければならないと書かれております。これはただ記帳がされているだけでは足らず、事実を真実として証明していくには、取引の都度、記帳をすることを求めているからです。
 最近では、パソコンにより記帳がスムーズに行える様になりました。しかし、その記帳は本当に簿記のルールに基づいて記帳がされているのでしょうか。帳簿が手書きでなくなったので、見た目はきれいになったのですが、その中身についてはいかがでしょうか。大企業の会計的な不祥事を新聞で見かけますが、あのような不祥事は、本当に日頃の監査が行われていたのか考えさせられる出来事です。

 企業は、地域の重要な生活の柱です。株主や役員だけのものでは無く、職員、得意先、仕入先どころか、その先に生活をしている全ての人達のものです。ですから、この企業を預かる経営者は常に真実性を追求し、疑いを掛けられることの無いように記録を残さなければなりません。その1つに金銭面での帳簿が必要となるのです。

 記帳方法に疑問や不安がある方はどんなことでもお尋ね下さい。それにより、私も成長する事が出来、そして少しでも地域社会の安定を保つことが出来ると信じております。