物事の本質を見抜く力                                             

                  平成24年11月25日
 昔の教えの中に、リーダーとしての必要条件の一つとして、「智」があります。「愚(ぐ)者(しや)は成事(せいじ)に闇(くら)く、智(ち)者(しや)は未(み)萌(ほう)に見(み)る」と言われるように、愚かな人間は、物事がはっきりと形になって現れてきても、まだそれに気づかない。一方、智者は物事が未だ明らかになっていないうちに、これからどう動いていくのか、その動きを察知することが出来るのです。つまり「智」とは単なる知識を指す訳ではありません。様々な方法によって手に入れた情報から、将来起こりうる出来事を想像する力である洞察力を指しているのです。 そして洞察力とは、物事の本質を直観的に見抜く力であり、すなわちこれから起こるであろう世界を見る力である先見力とも言えます。 ではこの洞察力を身につけるにはどうしたら良いのか、それには様々な情報を自分の中に吸収して、そして熟成させて行くことが必要です。情報が熟成すると、これから起こる世界が想像から確信に変わっていくのです。 しかし、間違ってもそこら辺に飛び回っている情報を簡単に信じてはいけません。あくまでも、信じられる様々な情報を仕込んで、そして熟成させることが肝心なのです。
 また、こうした修練は普段の生活の中にあります。人は毎日の仕事のなかで自分を磨き、修練を重ねなければなりません。これを「事上錬磨」と言います。特別な講座を受けて修練をすることも大切なことです。しかし、それでは普段の生活にはなかなか生かすことが出来ません。そこで望まれるのが、常に問題意識を持ち、意欲を燃やして仕事に取り組む事であります。この様に意識している人は、仕事の勘が研ぎ澄まされてきます。これによって、経営上のトラブルを未然に防ぐことが出来、また問題が起きても適切に対処できるようになるのです。ですから、「事上錬磨」が欠かせないのです。
 そして、最後に学ぶべき事は「歴史に学べ」です。 沢山の本が書店には並んでいます。この本の中でもつまらない本はすぐに消えてします。その反対に、ベストセラーになった本は、著者の知恵が詰まっているのです。そのベストセラーの代表作として「学問のすすめ」があります。当時の日本の人口3,000万人に対して、300万冊売れたのです。紙がまだ貴重な時代ですから、異常な売れ方をしたのです。また、何千年と生き残っている古典は、人間の営みに関する心得が書かれています。しかも実践的な知恵にあふれていますから、現代人が読んでも学ぶべき事ばかりです。
 人間関係の悩みは、けっして現代の問題ではありません。「職員にやる気を出してもらうにはどうしたらよいのか」などは、昔から問題視されていた事です。この解決方法が古典には詰まっているのです。この情報の宝の山となっている本が、図書館では無料で皆さんを待っています。そして自分の中で熟成させ、普段の生活に生かしていくことこそ、いつの時代でも必要な能力なのです。