与えられた肩書き
                                                              平成25年4月25日

 私達が仕事をする上で必ずついて回るのが「肩書き」です。「肩書き」とは名刺に記載する、職名・地位などであったり、又は社会的地位や身分を示す職業を表します。この「肩書き」はとても大切なものです。名刺を交換しその企業を初めて知ったとき、その交換した相手の態度を見てその企業の内容を判断しします。また、初めて出会う職種の場合は、その職業の事を、その交換相手1人だけで、どのような職業か判断されるおそれが有るのです。ですから、書かれている肩書きに責任を持たなければなりません。

 しかし、この「肩書き」の意味を誤解している人がいるようです。
 様々な縁があって現在の立場となり、名刺にも現在の「肩書き」を記す事が許されるのですが、この「肩書き」の責任の範囲や仕事の内容を自己判断で限定してしまう人がいるのです。

     成 龍 昇 天    作 蛇 入 草 

と言う言葉があります。これは、「ある時は、天空に飛翔して風雲を巻き起こす龍の如く、臆することなく国家社会に仏法を宣揚し、またある時は、草叢の内を人に知られずに行く蛇の如く潜行密用して陰徳にはげみ、世の一隅を照らす、そんな存在でありたい」という意味です。
 龍になると天に昇り、蛇になると草場に入る事を意味していますが、龍になった人が頂上を目指し、蛇となった人が地を這うという意味ではありません。組織において管理者としての「肩書き」を与えられたとしても、天から指示を出すこともあれば、草場の陰から監視していることもあると理解しなければなりません。
 管理職の立場となり、人へ指示を出している姿は、とても格好良くあり、またあこがれるものです。しかしいざ管理職に就きますと、これほど大変なことはありません。ある人が言っていましたが、「長たる立場に就いたときは、決してほめられる事は無い、いつも反対意見を言われてばかりで、心が折れそうになる。しかし大きな責任を背負っている訳だから、当然のことだ」これを聞いた時、経営者とはなんて孤独な仕事であるか考えさせられました。人間のほとんどは、ほめられて成長することが出来るそうです。経営者は常にけなされているのですから、簡単に成長できるわけありません。
 さらに、蛇となって草場の陰から眺めるとは、ただ眺めていることを言うのでありません。じっと口を出さずに仕事を見ていて、もし失敗があったら、全責任を負う事を指しているのです。そう考えると、じっと眺めていることの難しさがわかると思います。
 こうした2つのことを肝に銘じて「肩書き」を全うする事が大切であると言っているのです。管理職に就いたからと言って、指示だけを出している人でも不十分ですし、また経験年数の浅い職員と一緒に作業をしているだけでも不十分なのです。

 自らに与えられた「肩書き」の役目を理解し、臨機応変な対応をする事で、組織の力をより強力なものへとする事が出来るのでしょう。