リーダーのあり方
                                                              平成26年1月25日

 人間は自分の損得を考えて行動するものである。この考えを柱として人間学を説いているのが韓非子です。例えば、「鰻屋さんは、平気で鰻をつかむことができますが、鰻に良く似ている蛇をつかむどころか、嫌いな人がほとんどです。」また、「芋虫を嫌う人は大勢いますが、蚕は大切に扱われるものです」鰻や蚕は利益になる事が分かっていますから、好むのだと解説しているのです。
 人間は利益によって動く動物である。このことは目を背けたくなると思いますし、反発したくなる人もみえるかもしれませんが、決して外れた考えではないはずです。
 リーダーが、組織として成果を上げようとするとき、自分だけが利益を手に入れようとしても、人は動いてはくれません。人は利益によって行動をするのですから、人を動かすには働いてくれる人に利益を与えることが必要だと言っているのです。リーダーはこれを理解しなさいと言っているのです。

 さらに、「三流の経営者は自分の能力を使い、二流の経営者は他人の力を使い、一流の経営者は他人の知恵を使う」と言っており、組織の成果を数字で表した場合に、仮に同じ金額の利益が出ていたとしても、リーダー一人の考えで処理したものと、組織全体の人間の能力で処理したものとでは、その中身は全く違うものであり、だからこそ、人を動かすポイントを勉強しておかなければならないのです。

 では、何がポイントであると説明しているかと言いますと、一つ目は「簡単に人事面での権限を与えてはならない」と言っています。人事権を他人に渡してしまえば、職員はたちまちその権力を握った人に目を向け、リーダーは実権のない地位に棚上げされ、責任だけを取らされる事となってしまいます。二つ目は「小さな利益にとらわれない」目の前の利益にとらわれ、本来の目的を達成できないばかりか、結果としては損失を被ることあります。欲に目がくらみ、自分の利益ばかり追い求めていたのでは、いつか身を滅ぼすこととなるのでしょう。三つ目は「忠臣の意見を聞く」です。これは全ての人の意見を聞けと言っているのでは有りません。忠臣(忠義な臣下)の意見を聞けと言っているのです。自分が間違っているのに、人の意見を聞かずに意地を通そうとすることは、大変危険なことなのですが、だからといって大勢の人の意見を聞いていたのでは、ただ振り回されるだけで、時間の無駄であり、まとめる事が出来なくなってしまいます。ですから、人の意見を聞くにもその加減が難しいのです。

 組織が一体となるように、人を動かす事は大変難しい事です。自分の力だけでなく、他人の力を借ることが大切だと言っているのに、他人に任せっきりでは危険だとも言っているのですから、大変厄介なものです。
 韓非子は、「人は利益によって行動する。」この考え方を柱に、人を動かす事を説いた書物です。リーダーとは何をすれば良いのかを見つめ直すときには、一度読んで頂くと良い本かもしれません。