ルールの傘
                                                                   平成26年6月25日

 歴史上、大変なうつけぶりで知られる織田信長ですが、民衆に対しては違った一面があったようです。

   仏の嘘をば方便といい 武士の嘘をば武略という。
   これをみれは、土民百姓はかわゆきもの也。
 自らに都合のいい仏の解釈を民衆に信じ込ませ、その上がりで安楽を貪る坊主。武略という名の謀略や駆け引きで人を騙し殺し、他家を攻め滅ぼしていく武士。
 それに比べれば、自らの生活を守るために運上金や年貢をごまかす土民百姓の嘘など、可憐なものではないか。非は非としても、あまりひどく罰せぬよう。

 人の集まりである社会には、必ずルールが存在します。ルールは、紙に書かれている事もありますが、たいていの場合は自然に出来上がっていくものの方が多く存在します。
 企業の経営者は、企業の内外にある様々なルールの下に経営を行っていますが、ルールを破った際の罪の重さが、それぞれ違うことを知らない経営者が多いようです。
 例えば、大雨が降り危険を感じた住民が、公共施設に逃げ込もうとしましたのに、施設が営業されている時間外は立ち入ることが出来ないと追い返した事があるそうです。まさに典型的なお役所仕事なわけですが、「時間外立ち入り禁止」のルールを守らせることで頭がいっぱいで、何が大切かを自分で考える事が出来なくなっているのです。例えばルールを守らなかった事により罪があるとされたとしても、他に守らなければならないものがあり、そのルール違反による罪の重さは、その時の事情によって変化するのが自然の流れなのです。
 また、人数が多く集まる組織として、例えば大企業や市役所などの行政は自ら作ったルールに縛られて、身動きがとれなくなる事もあります。ある申請をした際に、なかなかこれが認められず困っていても「ルールですから」と平気な顔をして言う。その人はルールを厳格に守り、これにはずれる事無く運営をしているのだから悪いわけがないのに嫌われるのは何故でしょうか。答えの1つとして、ルールは大切な事は誰でも知っています、しかし、そのルールを知った上で、自分の頭を使って考えて判断する事が大切だからです。

 勘違いをしないで下さい。ルールを守らなくても良いと言っているのではありません。ルールを守る事はとても大切な事であり、守る事は当然の事です。しかし、だからと言って自らが考える事をやめてしまえば、ルールがあるために大きな間違いを犯す危険性がある事を知っておかなければならないと言っているのです。物事は常に、一方向から見るのではなく、色々な方向から見て、何が大切で何を守らなければいけないのか、その真実を見る習慣が必要だと言っているのです。ルールの傘に隠れていては、組織を束ねるどころか、企業経営など出来るものではないのです。
 ルールの中にある、最大の敵は、これに身を任せて思考を停止することではないでしょうか。