選ぶ事は難しい
                                                              平成28年3月25日

 経営者や集団の代表者の仕事と言えば、「選択をする」事ではないでしょうか。「お昼は何を食べようか」など生活に必要な事であったり、「これを仕入れようか」「この人にいくらで売ろうか」など仕事で必要な事など、あらゆる場面で「選択」をしているのです。

 経営者が商売を始める際に、大変時間をかけて検討するものの一つに「値入」があります。
 商品やサービスについての値段を決める仕組みは、先ずは仕入れる為の費用や製作する為の費用などの原価がいくらに成るかを計算し、これに欲しいだけの利益を上乗せして、その商品やサービスの値段が決まります。しかし、ことは簡単に決められません。たとえ計算式としては足し算ばかりで、正しく計算が出来てももう一つ検討をしなければ成りません。それは同業他社の値段です。原価に利益を乗せる足し算に、他社との比較をする為に必要な掛け算が加わりますから、やはり大変難しい選択が迫られます。職員さんから「この値段で本当に良いですか」なんて確認を受けた事があるのではないでしょうか。値入で会社の経営が立ちゆかなく成ることもあるくらいですから、慎重かつ大胆にそして、時代の流れに合わせて適時に判断が出来なければ成りません。

 しかし、この「選択」から逃げたくなるリーダーがいるのも現状です。「選択」をすることで、多くの方の生活や多額のお金が無駄になってしまうかと思いますと、エアコンの効いた部屋で椅子に座って作業的には楽に思えるリーダーの仕事も、決して楽な仕事ではないことが分かりますね。

 幕末の英雄の1人である西郷隆盛は、若い頃二度の島流しにあった際に、多くの書物を読み、人間学について勉強をしました。そしてチームの代表者にとって最も必要な物として「組織を率いる者は、心を常に公平に保っていなければならない。」の想いを旨に国全体を動かして行くのです。公平な心を持つ事で、「主義、主張、好き嫌い」で判断をする事無く、全てを「私心」を入れずに判断することが必要となるのです。
 「私心」の無い状態とは「かたよらず」「こだわらず」「とらわれない」状態にあるそうです。私なんて常に人を妬んでみたり、羨ましく思ったり、格好つけてしまうものですから、なかなか適切な判断が出来ずにいます。
 何にもとらわれることなく、人の意見に耳を傾け、それでも自分の芯となる意見を持ち、そして常に正しい判断が出来る様になる訓練をするため、様々な団体やセミナーがあります。私は税理士という仕事の面では「租税法務学会」に、経営者の面では「岡崎商工会議所青年部」に所属しています。どちらも形として目に見えるものでは有りませんが、実はそれ以上の能力を試され、そして身についてきている気がしております。