無駄の中にも宝あり
                                                              平成28年7月25日

 もうすぐ夏の全国高校野球大会、そして地球の裏側では、オリンピックが開催されます。だんだんと年を重ねるたびに、たった1回しかないチャンスに、長い年月をかけて練習に次ぐ練習を重ね、言い訳も許されない勝負の世界で生きている彼らの姿に、とても勇気づけられる事があります。
 私達も仕事などで長い月日の間、苦しみながらも事業が最終工程を迎えるとき、金銭的な価値以上の充実感を誰でも感じたことがあるではないでしょうか。この充実感があるからこそ、人は苦しみにも耐えることが出来るのでしょうね。

 私達は、何かを成し遂げようとしたとき、そこには努力が必要だと言うことも知っていますし、苦労をすることも分かっていますから、なかなか勇気が出ないことも多々あります。
 私が税理士の道を歩むと決め、いざ試験に臨んではみたものの、何冊もの税金に関する法律を丸暗記しなければならない事を知ったとき、愕然としたことを覚えております。法人税という科目を合格するには約300ページもの暗記が必要だったからです。どなたでもご存じだと思いますが、人は覚えても忘れる力を持っています。ですから、どんなに1ページを覚えても、すぐに忘れるのです。1ページ、2ページと覚えても、たちどころに昨日覚えたはずのページが失われて行くのです。ですから、暗記をする場合に一番苦しかった事は、覚えたはずのページを覚え直す事なのです。なぜなら、この努力が報われるようには思えないからです。
 しかし、今税理士として仕事をさせて頂いております。なんとか5科目の合格を頂く事が出来ました。結局何度も何度も覚えては忘れ、覚えては忘れを繰り返す内に、いつしか覚えている自分に気づくことが出来たのです。現在では、この受験経験を伝えたくなり、税理士業務の合間に、資格の学校で講師として話をさせて頂いております。
 無駄だと思っていた勉強も、何度も覚え直していく内に定着させることが出来ました。この定着されたモノは、素晴らしい財産となるのです。忘れてしまうと分かっている事でも、繰り返していますと、それは無駄なことではなかったのだと感じる事が出来ました。
 
 あらゆるモノが合理的に動かされることを良いこととされ、無駄をいかにして省くかが検討されていますが、実は無駄だと思っていることにも、長い年月で考えると意味のあるモノだったと気づくことがあります。失敗は成功のもととは良く言ったもので、その失敗がなければ、今の成功はないからです。

 今ある環境を変えずに、このままでいたいと思う方が多いとは思いますが、残念ながら環境は必ず変化します。ですから目の前にある仕事だけを見ず、無駄だと思っても挑戦をし続けなればなりません。
 人は、どんなときでもチャレンジャーである事が必要なのです。