バトンリレー
平成28年8月25日
今年のオリンピックでは大変多くの日本の選手が活躍され、私が出場したわけではないにもかかわらず、何か誇らしげに感じる事が出来ました。
その中でも、私が一番心に残っていますのは、400mリレーの銀メダルです。
日本はなぜ世界の強豪相手に銀メダルを勝ち取る事が出来たのでしょうか。「答えは、日本独自のバトンパスのテクニックです。」と NHK NEWSWEB スポーツニュース部の松井晋太郎
記者は言っています。4人で走るリレーで、桐生祥秀選手、飯塚翔太選手、山縣亮太選手、ケンブリッジ飛鳥選手の能力は、もちろん日本人最強の4人です。しかし、世界の短距離ランナーからすれば、ずば抜けた能力と言うわけではありません。そこで、日本独自のバトンパスである、アンダーバトンパスにあるのです。この方式を15年も前から採用し、練習を重ねてきたそうです。そして、さらに決勝の前日にも「本気でメダルを狙う日本チームはこれに満足しませんでした。翌日の決勝に向け『さらに攻めるバトンパス』に挑戦しようとしたのです。バトンを受け取る選手たちは、スタート地点より手前の自分で決めた地点に前の走者が迫ると走り始めます。日本は予選の時よりも、走り始める地点を3回のバトンパスの合計で距離ではおよそ30センチ手前にすることで最大限の加速を狙いました。100分の1秒を争う戦いの中の緻密な調整です。バトンパスの距離が伸びれば、当然、バトンがうまく渡らないリスクも高まりますが、『メダルを狙う』4人に迷いはありませんでした。」あえてリスクの高いバトンリレーを選択し、前日まで練習をしたのです。
そして決勝レース。「第3走者の桐生選手は、『思いきりスタートしても飯塚さんが渡してくれると信じていた』。4人は、自分と仲間を信じて、ただ前を見つめて走りました。結果、予選の記録を0秒07更新するアジア新記録でジャマイカに次ぐ2位。」という結果を出すことが出来たのです。
バトンリレー。それは人と人とをつなぐものです。このリレーは組織や代表者の承継にも言えることではないでしょうか。バトンを渡す手法は説明を受ければ誰でも出来ます。しかし、これを繰り返し練習し、その練習から生まれる信頼感か渡す側と、受け取る側との間に最高の力が生まれるのでしょう。
レース後の記者会見で、「海外のメディアからは日本のチームに『いつからバトンの練習したのか』という質問に対し、飯塚選手は『3月から頻繁に練習した』と答えました。それを聞いたボルト選手は驚いた表情で言いました。『僕たちは2、3回だからすごい練習量だよ。日本はチームメートの信頼し合っていた。チームワークだ』と言ったそうです。」
世間では事業承継について金銭を問題視している発言をよく耳にしますが、事業承継にたいせつなものは、金銭面のテクニックではなく、渡す側と受け取る側の信頼関係こそが一番大切なんだと実感できた場面でした。