平成20年10月25日
私の尊敬する方で、北九州市に池田繁美という方がみえます。池田繁美先生は常に「人は素直な心でいなければならない」と話され、自ら「素心学」という学問を提唱されております。人生の極意は「素直」に有り、企業の経営においても大きな力となるそうです。私には、その「素直」と言うものがきちんと、理解できずにいました。
最近の新聞記事の中に、労働災害保険の認定に関する判決が紹介されておりました。十年前、岐阜県の国道を通りかかった方が、軽乗用車の横転事故に出くわし、軽自動車の中に閉じこめられていた女性を救助。さらに、後続車の安全のため、軽自動車を動かそうとしていたところへ、後続の車に突っ込まれお亡くなりになりました。その亡くなられた方の奥さんは業務中の出来事なので、労働災害の申請をしたのですが、国側は「仕事中に、人命救助のため車を降りた行動は、業務外の私的行為」として労働災害の否認をしたのです。その否認につき奥さんは国を相手に訴訟を起こしました。
その後出された判決では、救助もその後の行動も「無理からぬこと」とし、訴えを起こした奥さんの勝訴と成ったそうです。
裁判への経緯など深い話は分かりませんが、制度を厳格に適用しようとした国側の判断に対して、夫のとった勇気ある行動を「業務外の私的行為」と片付けられてしまった奥さんとしては、国を相手に訴えることにしたのでしょう。
判決の中にもありましたが、人を助ける行為は「無理からぬこと」であり、それを見て見ぬふりをすることの方が問題の有る行動なのです。この記事を読んで、この亡くなられた方の行動が、まさに池田繁美先生の言われる「素直」な行動だと理解が出来たのです。知識や経験に基づいた良識ではなく、「人が無意識にとった行動」それが素直な行動であり、その素直な行動こそ人を引きつけ魅力を感じ、大きな力となっていくのでしょう。
この記事の最後には、次のように書かれていました。
生前お会いしたことはないけれど、その人はきっと「当たり前のことをしたまでです。」と天国でそう言って微笑んでいる気がします。