古きに尋ね、新しきを知る
平成23年10月25日
「古きに尋ねて、新しきを知る者は、人の指導者となることができる」この言葉は、中国の「大学」という書物の中に書かれています。
古きに尋ねるとは、昔の人達の「成功」と「失敗」を知りなさいと言う意味です。
国を1つにまとめるには、法律を作ったからと言ってまとまるものではありません。治める人間が徳を知り、法律を守ろうとする人の心を学ばせる必要があると歴史が教えてくれます。
中国のこうした教えは、海を越えて日本にも昔から伝わって来ています。先日の野田総理大臣の「誠心誠意」についても、新聞紙上には「勝海舟の言葉」として紹介されていましたが、勝海舟も中国から伝わった陽明学や、大学を学び、この言葉を引用して使っていたのです。ですから、古きに尋ねるとは、古くなったものをいつまでも使いなさいという意味では無く、国を永く繁栄させるには、指導者こそが「有徳な人物」とならなければいけないと言っているのです。
そして、「新しきを知る者は」とあるわけですから、人の心を知り、そこから発想される新しい世界を創造することが必要であると言っています。つまり、歴史から学び、これを知っているだけでなく、自分の生活にいかし、そこから未来を創造しなければ、企業経営を任されている指導者としては失格であると言っています。
また、この言葉にはもう一つおもしろい教えがあります。原文には「尋ねて」は「温ねて」と書かれています。「温」を「たずねる」と読んでいるのです。「温」は本来「溫」と書きます。これを「囚」と「皿」と「氵」分けて考えますと、罪を犯した疑いのある囚人に、「皿」つまり食事を与えます。しかし、その食事には「氵」ですから温かいスープも添えてあげるのです。温かい食事が、堅く閉ざされた人の心をほぐしていき、囚人から本当の事を聞くことが出来る事を意味しているそうです。温かい食事には、警察官と囚人という相反する立場であっても、信頼しあえる関係になることが出来るのです。
何が正しくて、何が悪いのか。この事でさえ、理解できないことが沢山あります。仕事柄、法律を勉強していますが、法律を理解する上で一番大切なことは「正義とは何か」です。正義という言葉ありますが、これを現実の社会に当てはめようとすると、これがなかなか難しい事です。ハッキリとした答えのない事柄かもしれませんが、せっかく経営者と成らせていただいたのですから、古きを知り、新しきを知る指導者と成らければなりませんね。