仏つくって、魂入れず
                                                   平成23年1月25日
                                                                               
 確定申告の時期になりました。準備の方はいかがでしょうか。
 私達の業種は、2月16日から始まります確定申告が、一番忙しい時期です。どの税理士も「さあ、始めるか」と言う思いでいると思います。

 確定申告書とは、ご存じのように個人事業者の方は所得税法という法律に基づいて作成をされ、法人の方は法人税法に基づいて作成されます。このように作られた申告書を、私が勤めていました会計事務所の上左近功先生は、芸術作品のように扱ってくれました。
 上左近功先生は、「申告書の中にお客さんがいて、そのお客さんが一年間どんな商売をし、生活をしてきたが見える申告書を作って下さい。皆さんの作る申告書は芸術作品です。いつも楽しみに見させていただきます。」と言ってみえたのです。
 申告書を芸術作品と表現される税理士は、上左近功先生の他にはいないでしょう。

  決算書は、決まった法律によって作成されます。その法律は、誰が決算書を作成しても、同じ決算書が出来るようになっているのですが、現実には作成する人によって「癖」が出てくるようです。特に今ではコンピュータによって作成されますので、紙の上に数字が印字されているにすぎません。しかし、その決算書には、その商売をしている方が必死に一年間活動してきた姿を描いていくわけですから、簡単な気持ちで作ったのでは、失礼にあたる事でしょう。

 例えば、写真は現実を写します。しかし、カメラの扱い方によってその出来上がりが、かなり違った作品になります。同じカメラを使っても、その作品には人によって違ったものが出来上がるのです。機械を扱う技術と、被写体に対する気持ちが、その作品に表れてくるのです。

 今の仕事を17年してきましたが、少しは皆さんに見ていただけるような作品に仕上げることが出来るようになったでしょうか。
 様々な業種が、コンピュータの開発によって機械化していきます。そして、これを扱う人間が、機械的に動くようになってしまっているようです。
 人間には心があります。そして、昔の職人さん達には、機械にも心があると考えている人達だったと思います。その人達から生まれる商品に、人は引きつけられるのでしょう。売れるものを創ることは大切なことですが、それ以上に良いものを創らなければ、結局は流行で終わってしまう事でしょう。最後の一手間をかける気持ちが、10年、20年と企業を成長させてくるのかもしれませんね。

 これから始まる確定申告に、もう一度新たな気持ちで向かっていこうと思います。