井の中の蛙
                                                              平成25年2月25日

  井の中の蛙は、大変有名な話です。
 ある時、井戸の中のカエルが東の海に住む亀に向かって語りかけました。
 「亀さん、亀さん、私は楽しくて仕方がないよ。毎日、外にでては井桁の上に飛び跳ね、中に入れば水にどっぷりつかりながら、ぼうふらやオタマジャクシをにらみつける。水を独り占めにしながらふんぞり返っているこの楽しさ。一度あなたも遊びに来て試してごらんよ」
 海の広さを知らないカエルが、自分の知っている環境を最高の環境であると亀にはなす姿が、亀にとっては滑稽に感じる情景を表しています。
 このような出来事は、誰しも経験したことが有るのではないでしょうか。
 私達は、自分が経験してきた事を物差しにして、全ての事柄の善悪を判断しようとします。私の仕事は税にまつわる法律を相手に、まさに自分の価値観で様々のことを白黒と判断していきます。法律を相手に仕事する最も大切な事は「現場を知る」事です。これを事実認定と言いますが、これが意外と難しい。取引には形として残っている証拠、話で聞く内容、そしてその取引に至るまでの理由があります。これらを確認する際に「思い込み」で調べを進めると間違った方向へと進んでしまうのです。そのため、とても恥ずかしい思いをすることも多々あります。「現場を知る」事はどんな出来事においても、とても大切な事なのです。

 しかし、この井の中の蛙の話には、続きがあるのです。
 海の広さを知らなかったカエルは、亀から見ればとても滑稽に思えたかもしれませんが、逆に亀の知らない事をカエルは知っていたのです。それは、井戸から眺める空の高さでした。どんなにジャンプの得意なカエルでも、空には手が届きません。そんな空の広がりを考えるとワクワクするのです。そして、井戸の中の環境はカエルにとって最高の空間であることを知っていたのです。

 一人の人間が出来る事はほんの少しのことしかできません。だから、カエルが海の広さを知らないことは決して恥ずかしいことでは有りません。なぜなら自分に任された仕事をその神髄まで学んでいくことが、真に任された仕事だからです。
 世間の広さを知ることは、自分への戒めとし大切な事です。しかし得てして広く薄い知識を身につける様になってしまいます。それよりも一つ一つ任された仕事を丁寧に追求することこそ、これからを生き抜く為には大切なことなのです。
    井の中の蛙 大海を知らず。されど 空の高さを知っている。
 一度しか無い人生をどの様に生きるのか。もう一度自分に任された使命を振り返り、その高さに志を持つ必要があるのです。