分かったか、だったらやれ

                                                              平成25年9月25日

 

 当たると分かっている宝くじがあるとすればどうしますか。もちろん、その当たる宝くじを買うでしょう。しかも、その当たる宝くじだけを買うでしょう。しかし、そんな宝くじは分かりませんから、当たらない宝くじまで沢山買うこととなるのです。

 東京オリンピックによって、この地方にもたらす影響は、どれほどのものか分かりませんが、そこに仕事として投資をする経営者もいるのではないでしょうか。しかし、それは宝くじと一緒で、当たるかどうか分からないので、その企業において支払う事が出来る金額を限度に投資をすることとなるのです。

 なぜ、当たるかどうか分からない投資をするのか。それは、それが経営者の仕事だからです。明日の売上、来年の売上、さらには10年後の売上を心配して、毎日一日中試行錯誤の連続です。リーマンショックや東日本大震災など、どんな経営者であっても見通すことの出来ない現象に、企業は窮地に追い込まれることもあるのです。だからこそ、様々な創造を膨らませて考えるのです。

 

 天才的な才能を持つスポーツ選手が、試合当日、多くの取材陣からインタビューを受け緊張から本来の能力を発揮することが出来ない事が有ります。この様な経験はどんな人でもあるはずです。その時、監督から「肩の力を抜け」とアドバイスを頂きます。しかし、当の本人は、肩の力を抜こうにも、いっこうに抜くことが出来ません。実は、プレッシャーから動きが悪くなったのは、本人が意識して肩の力を入れたのではなくて、意識に関係なく肩に力が入ってしまっているからです。ですから、「肩の力を抜け」と言われても、抜き方を知らなければ、いっこうに改善出来るはずもなく、本来の力を発揮することは出来ない事のです。

 「分かったか。だったらやれ」これが現代の教育です。理解させ、これを実行させる。理解すれば実行出来ると教えられているので、疑問に思わないかもしれませんが、実は理解することと、実行することは常に一致している訳ではありません。先程の「肩の力を抜く」にしても、力を抜いた方が良いと分かっていても、抜くことが出来ないのです。

 

 経営者は、毎日試行錯誤の連続です。寝ている時もひょっとしたら肩の力が入っているのかもしれません。これでは、本来の力を発揮する事が出ず、間違った判断をしてしまうかもしれません。現代の様に、瞬時に適切な判断が必要な時だからこそ、肩の力を抜くことが大切なのです。

 様々なセミナーでは、思考の連続で物事を判断するように組み込まれていることが多いようです。これは間違っている分けではありませんが、思考を停止する訓練も大変重要な事です。ちなみに、イチロー選手は「膝の力を抜くと上半身の力も抜くことができる」と言っています。本物のプレイヤーは、力の抜き方も知っているようですね。