逆風に向かって
平成26年11月25日
今年は11月になっても、台風がやって来ました。台風による被害も多く、浸水、土砂、風による影響を多く受ける年でした。自然というものは大変恐ろしいもので、雨風にさらされて、寒い日もあれば暑い日もあり、少しずつ崩壊していく。どんなに硬い岩であったとしても、崩れてしまうものなのです。風の強い日に外に出ると、目には見えないけれどとてつもない力を感じ、正直なところ私は強い風を受けるのは苦手です。
日本語には風と言う字は多く使われ、風流、風格、風雪、風味など様々ですが、風という字には「眼に見えないものの象徴」としての意味があるそうです。確かに自然とともに生きていくことを考えて暮らしてきた日本人にとっては、目に見える物だけではなく、みえない物も大切にしてきた先人達の心が良くわかりますね。
ところで、老舗と言える会社には良い社風があると言われます。社風という言葉も、目には見えないけれど、人を動かし、会社組織も動かす力があるのです。風には岩をも崩す力があるわけですが、この現象を「風化」と言い、人間も同じように社会の中で風を受け、大きな影響を受けて成長をしていく。ですから、企業の中にあるその良い風を「社風」と呼んでいるのです。
しかし、社風には良い物とばかりではありません。悪い社風も組織の中では起こるのも当たり前のことです。良い社風を持った組織の風は、組織の長にとって追い風となりますが、悪い組織の風は社長にとって逆風になるのですから、大変な苦労が伺えます。だからといって悪い社風をよけてばかりもいられず、あえて逆風に向かって帆を張って進む技術も必要であり、それには論語などの昔の人の教えが最も適した資料と言えるのです。人間は一人一人ならば良い人が多いのですが、組織となると簡単にはいかず、問題を抱えるもので、これは何千年経っても変わらない様です。
今から150年前の明治維新が起きた頃、日本には約3,000万の人が住んでいました。黒船に乗ってやって来た欧米人は、3,000万もの人間が住んでいる江戸を見て大変驚愕したそうです。人間力、組織力いずれをとっても最高水準であり、世界の中でもこれだけ多くの人が住んでいる都市は無かったからです。そこには、すべて目には見えない風が吹いていたのでしょう。
人の集まりが大きくなればなるほど、そこには風があります。時には1人で立っていることが出来なくなる程の強い風が起きることもある。しかも、その風は自分でえ起こした風で無いときもあるのですから、なかなか耐え難いときもある。それでも歯を食いしばって立っている。逆風を正面から受け止めて、いつの日か追い風となる日が必ず来るのですから。