勇気を出す
                                                                             平成27年3月25日

 私は平成19年10月8日に税理士として独立開業しましたので、開業してから約7年半が過ぎました。独立して事業をもつということは、会計事務所に勤めていたときとは、考えられないほど様々なところへ顔を出すようになりました。こんな私でも少しは成長できたでしょうか。
 私が一人で税理士事務所を運営出来るか悩んでいたときに、福岡県の池田繁美先生に相談に伺いました。
 税理士としての知識量は大丈夫か、資金は足りるのか、お客さんは増えていくのか。様々な点で怖くなり、夢に出てくるようになりましたので、毎日がただつらいだけでした。そんな悩みを池田繁美先生に話に行きますと、「どんな決断をするにも、最後にはあなたの勇気が必要ですよ」と言って頂いたのです。「勇気か、誰でも怖いことはあるはずだ。俺だってほんのちょっとくらい冒険に出かけても良いはずだ。」と独立開業を心に決めたのです。
 
 経営は、見えるはずのない未来を予測して、限りある資金を投資する。そして、これが失敗に終り、若しくは多少は良い兆しが見えてきますと、また次なる投資をする。この連続が経営です。だからこそ、勇気を持って経営に臨む必要があるのだと思い、この7年半が有りました。

 しかし、最近手にした一冊の本で、これが間違っていたことに気づいたのです。それは、新渡戸稲造著「武士道」と言う本です。
 「武士道」は1898年に新渡戸稲造がアメリカに滞在中に英文で書かれたものであり、欧米で多くの方に読まれ、英語版だけでなく、ポーランド、ドイツ、スペインなど様々な国の言葉に訳されており、日本が世界に誇る質の高い堂々たるベストセラーであった。(新渡戸稲造著 奈良本辰也訳 武士道より)

 あらゆる種類の危険を冒し、生命を賭して死地に臨むこと。これをしばしば勇気と思い、勇猛と同一視される。しかし勇気とは正しい事をすることである。

 正しいことをする。
 当たり前の事なのですが、人が集団の中で生きていくには、なかなか難しい事です。上杉謙信と武田信玄は14年に亘って戦をしていたときのこと、北条氏によって塩の供給が絶たれ武田信玄が困っていたところへ、上杉謙信が「私は、あなたとは弓によって戦をするのであり、塩でする気はない」と手紙に書き、塩が手に入るようにしたそうです。放っておけば、しだいに武田信玄の勢力が弱まっていくはずのところを、敵に塩を送ったのです。これが私に出来るのか。

 池田繁美先生に「経営には、人、もの、お金が必要だと言われますが、実は経営には勇気が必要なんですよ。」と言われた勇気の意味が、今やっと分かった気がします。